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2007-12-26 (水)

冬の森

師走も押し迫ると、何かとやることが増えてせわしくなる。
 
不思議なことに、こういうときこそ逆に森に行きたくなる。
 
自然観察仲間と声を掛け合って、札幌郊外の野幌森林公園にでかけた。
 
みな家庭の大黒柱だが思いは同じなのか、この種の話はすぐまとまる。
 
家内に言わせると「この忙しいのに優雅な主婦が多いのね」皮肉たっぷりの言葉が返ってくる。 
 
 < 静寂な森 > 
 
札幌市内はまだ雪が少ないが、野幌の森には20cmは積もっているだろうか、白一色だ。
 
落葉した広葉樹の枝から光が差し込むが、太陽は出ていても氷点下の世界である。
 
完全防寒のうえ、昼食の入ったリュックを背負って背筋を伸ばして歩く。静寂な森.jpg
 
冬の森は静寂そのものだ。みな眠っている。
 
時折シジュウカラやコゲラの鳴き声が、しーんとした森の空気を破る。
 
葉が落ちているため見通しがきき、鳥も容易に見つけることができる。  
 
  < クマゲラ痕 > 
 
クマゲラ痕.jpg幹に穴がいくつも開いている木に出会った。 
 
やや縦長の穴の状態からクマゲラがあけた痕だと思われる。
 
この穴は営巣のためでなく、幹の中の虫を食べるために開けたものだ。
 
けどなんとなくクマゲラのアパートのような感じがして面白い。
 
これだけ穴が開いてる木はほとんど枯れている。
 
いずれは倒れるだろう。
 
枯れているから虫がいるのか、それともクマゲラが突いたから枯れたのか、どちらが先かよくわからない。 
 
 < 木の価値 > 
 
白い樹皮の大木がどっしりと天を突いている。
 
ウダイカンバだ。
 
材質が堅くて狂いがないため、ピアノの材料として重宝がられている木だ。
 
周囲1mもあると1本で百万円もするという。
 
同じカバノキ科のシラカンバやダテカンバが、アイスクリームの棒切れや楊枝程度にしかならないのと比べると大違いだ。 
 
       写真左:ウダイカンバ           写真右:シラカンバ
       ウダイカンバ.jpg         シラカンバ.jpg
  
林業屋にとって、大変有用なウダイカンバは真のカンバだとして「マカンバ」と呼んでいる。
 
けど木の価値は昔のような林業の物差しだけで測れなくなってきている。
 
癒し効果である。
 
材質は悪くても白い樹皮は森にアクセントを与え、人の目を楽しませてくれる。
 
北欧ではこのような視点からシラカンバが見直されているということだ。
 
春先には樹液ももたらしてくれる。この樹液を特産として町おこしに活用している自治体もある。
 
シラカンバの樹液でコーヒーを飲むと、これまたおいしい。
 
確かに重厚で価値の高いウダイカンバに比べ、シラカンバは軽くて中身が薄い感じは否めない。
 
けど肩身を狭くする必要はない。
 
なによりも若い女性が大好きな木だから、それなりの価値はある。  
 
 < 縁起の良い木 > 
 
冬の森は色彩が乏しいなかで、低木ながら鮮やかな緑の葉に出会った。
 
雪をかぶりながらも葉はつやつやしており、葉柄が赤いのでとても目立つエゾユズリハ.jpg

エゾユズリハだ。                
 
常緑広葉樹で冬でも葉は枯れない。
 
新しい葉が出てくるのを待って古い葉が枯れることから「譲り葉」という。
 
老害とは無縁の木で、天下り公団などで自戒の意味をこめて植えたらいいと言った植物学者がいた。
 
次の世代にバトンタッチするまで生きていることから、縁起の良い木とされ、正月用に飾られる。
 
エゾユズリハ、数少ない感じの良い名前の植物だ。 
 
 < 森の主 > 
 
左右を見ながら歩いていく私たちの足は、別に示し合わせたわけでもないのに自然とお目当ての場所に向いている。
 
きょうはフクロウが来ているかな。
 
雪道からそれて森の中に入る。
 
夏なら入ってはいけないのだが、雪の上を歩くため罪悪感が緩和される。 
 
森の主.jpgいました。いました。
 
谷一つ隔てたハルニレの洞にひょこんと座っていた。
 
すでに数人のカメラマンが三脚を立てている。
 
フクロウは夜行性のため日中は寝ている。
 
ときおり首を動かしたり、目を開けたりする。奇遇に仰天.jpg
 
その瞬間をカメラマンはじっと待っている。
 
おそらく懐炉を体に巻きつけていることだろう。
 
フクロウから見ると「あの変なクマもような生き物は何しているのだろう。

おいらはスターでもないのに、毎日毎日よくくるわ」と薄目をあけて観察しているようにも見える。 
 
フクロウに動きがあまりないので、こちらからアングルを変えて手前に枝の雪の蒲団を、上部にトドマツの緑の葉をいれて撮影してみた。  
 
 < 奇遇に仰天 > 
 
野幌森林公園を訪れる人は、自然観察の人ばかりでない。
 
近くに住む人にとって格好の散歩道でもある。
 
また歩くスキーコースにもなっている。
 
カラフルなスキーウエアでスキーをこいでいる熟年夫婦が
 
こちらに向かってくるので、カメラを向けてパチリ。
 
すると写真を撮られた人が突然「望田さん、こんにちは」
 
名前を呼ばれてびっくりしていると「○△です」
 
そんな人知らないな。けど私の名前を先方は知っているようなので、気の抜けた声でとりあえず「はあどうも、こんにちは」
 
話をしながら○△さんを思い出そうとしてもでてこない。  
 
何しろ相手はスキー用の大きなサングラスをかけているので、顔もはっきり分らない。(写真右)スキー夫婦.jpg
 
どうしたらいいものかと思っていると、○△さんが後ろの 奥さんらしき人に「先月、東京で一緒だ った望田さん」と紹介したとたんに思い出した。
 
東京で先月碁会があり、そのとき初めてあった○△さんではないか。
 
それにしてもおかしい。
 
彼は函館に近い鹿部に住んでいると聞いており、なんでここにいるのだろう。 
 
聞いてみると、前から一度野幌で歩くスキーをやってみたかったという。
 
広い北海道、鹿部から野幌まで4時間はかかる。
 
その上、人がほとんどいない広い野幌森林公園の一角で偶然遭遇するとは、奇遇としかいいようがない。
 
それにしてもご夫妻で歩くスキーを楽しむとは、何と健康的なことか。
 
しばし雑談のあと、ご夫妻は太陽の光で一段と輝く白銀の世界に板を滑らし、森の中に消えていった。 
 
この日は森の中を4時間歩いた。
 
特段珍しいものが観察されたわけでもない。
 
しかしとても充実した一日で、疲れより爽快感が体に沁みた。
 
冬の森も味がある。

 札幌:望田武司

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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