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防災政策
3月11日の東北関東大震災は、被災地のみならず日本中に衝撃を与えた。
ところで政策のうち防災政策ほどやりにくいものはないというのが、県庁で防災担当部長も経験した私の所感である。特に発生の確率の低い災害への対策は、なかなか実行できない。例えば百年に1回の確率で、災害が発生するとしよう。するとそれでは今後99年は災害が起きないで、百年目に災害が起きると誤解する人がいて、そんなに急いで防災に予算を使うことはない、との主張が出てきて、この主張の方が通ってしまうのである。いうまでもなく百年に1回の発生確率とは、来年災害が起きてその後99年は災害が起きない場合も含むのである。要するに確率が低くても間近に災害が起きる恐れがあるのであるが、これがなかなか理解されない。
それから労働災害については、フールセーフという思想があって、どんなに愚かで不注意(フール)があっても、安全で事故が起きない(セーフ)ようにしておく配慮が求められているが、津波のような災害についても、絶対安全の上に、さらに安全を期するという必要がある。当然のことながら、念には念を入れる防災政策を実行に移すとなると、お金も余計かかる。
県内の複数の自治体の長に防災政策の必要性を話したことがあるが、首長さんは、「それは分かっている。しかし住民は、そんな将来の不安解消より、今の幸せのためにという刹那主義者が多くて長期的防災政策に金を使えないのだ」と苦衷を打ち明けてくれた。
こうした、将来のことより現在を重視する考えが主流を占めていたため、現実の防災対策は、想定する災害の程度を低く見て(低く見れば予算もそう大きくならない)、これを想定上の災害とし、それを超える災害は、想定外として無策で今日に至ったのである。この「想定外」「想定内」というのは絶対的なものではない。現に今回の津波襲来に際しても行政上想定された避難場所でなく、さらに高いところに自主想定して退避した小学生の団体が助かっている。小学生の想定のほうが大人の想定に勝ったのである。
今回の津波の被害を「想定外」として片付けてはならない。想定が甘かったための人災である。想定を甘くして、ほどほどの防災対策しか講じなかったので、安物買いの銭失いのようになってしまった。高度成長期で経済が豊かになった時から、例えば関東東北の太平洋岸に、びっくりするほど高い防潮堤を延々と造り、堤防の上を高速道にするような長期計画を実行していれば、津波は簡単に防げたのである。人命はお金では買えない。
NPO埼玉教育支援センター理事 竹内克好 (元埼玉県教育長 高崎市出身)
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