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2010-06-23 (水)

都心に咲く珍しい樹の花

6月に入って札幌はよい天気に恵まれている。
気温は20~25度前後、湿度が低く快適だ。
紫外線は強いけど、市民は大通公園の芝生に座って陽の光を満喫している。
全国の週間予報を見ていると、本州や九州では傘マークがときおり見られるが、札幌では1週間ずっと晴れマークだ。

これがもう10日も続く。心配されていた農作物の生育の遅れは急回復だが、秋まき小麦などはなお数日の遅れだという。
さらなる気温の上昇が強く望まれる。
5月下旬のライラック祭りに合わせて本州から見えた観光客が「ライラックを見に来たけど咲いてない」と嘆いた。
祭りが終わってから咲き始めた今年のライラックは、気温が低かったこともあって長持ちし、6月半ばになってもまだ咲いている。(写真上右)
こうした中、普段あまり見られない樹の花が都心に咲き始めた。

< ハンカチの木 

吹く風に任せて気持ち良く白い花びらをひらひらさせている。
ハンカチノキである。
このとても珍しい花は2年前にもご紹介したことがある。

あの時はわずか数個の花しか付いていなかった。
けど今年は100個以上の花が風に揺られている。
壮観だ。
場所は北大植物園、明治時代は町はずれでも今日では都心のど真ん中、こんなところに広いオアシスがあるとはありがたいことだ。
ハンカチノキはことしも新聞やテレビに紹介されて、6月初めは植物園で一番人気の花となった感がある。

もともとは中国四川省でパンダを発見した牧師が、同じ所でハンカチノキを見つけた。
一属一科の花である。
一民間人が北大植物園に寄贈したのが10年ほど前、
最初の数年間花は咲かなかった。
やはり寒い地域では無理か、土壌が合わないのかと関係者は気をもんでいたが、4年前突然花が咲いた。わずか2個の花だった。
初めて観察した時は、世の中にこんな花があるのだろうかと思った。(写真右:06.6.4)
トイレットぺーパーがぶら下っていると思った。
期待していた翌年は咲かなかった。
植物観察仲間に宣伝しただけにがっかりした。
しかし3年目はわずかであるが10数個咲いた。
そして去年からたくさん咲き始め、今年はなんと一本の木が白いハンカチに覆われるほど咲いた。
毎年通って観察していると、思い入れも深化する。

厳密にいうと、ひらひらしている白い部分は花ではない。花を包む苞(ほう)である。
ちょうどミズバショウの白い部分に相当する。
それでは花はどこにあるかと言うと、上辺に丸く黒く見えるのが花である。
ちょうどミズバショウの真ん中にある黄緑色の棒状が花であるように。

風に揺れるハンカチというと、夕張を舞台にした山田洋次監督の映画「幸福の黄色いハンカチ」を思い出す。
いまでも町の一角に黄色いハンカチが掲げられ、風に揺れている。(写真左)
幸せのシンボルである黄色いハンカチは、最近では「がんばれ夕張」を励ます際にテレビで登場する。
味のついた匂いのあるハンカチである。

それに比べて白いハンカチノキは、全く無垢でひょうひょうと風に揺られている。
味もそっけもないのが、逆に味わい深さを感じさせる。
ハンカチノキは札幌では植物園の他に、2つの公園にそれぞれ1本づつ観察される。

  < キングサリ >

大通公園のはずれに資料館がある。
旧控訴院で、大昔の支笏火山の噴火のさい、火山灰が凝結した札幌軟石でできており、国の登録有形文化財に指定されている。
その裏庭の道路沿いに、黄色い花が鎖のようにぶら下がって、風に揺れている。(写真右)
キングサリ(金鎖:マメ科)の花だ。
キバナフジとも言われる。
英語ではそのままGolden chain。

それほど珍しい花ではないが、あちこちに観察できるというものでもない。
札幌では5月一気に咲いた花が一段落した後に咲く花で、黄金色のぶら下がった花はひときわ目立つ。
資料館に勤めている唯一の若い女性に、「あなたにキングサリのようなネックレスをプレゼントしてくれる人がいつ現れるかなあ」というと、満面の笑顔が返ってくる。
素直でかわいい女性でユリの花のようだ。

下垂しているキングサリの花をよくみると蝶の形をしており、色は違うが間もなく咲く白い花がぶら下がるニセアカシアに似ている。(写真左:7.6.10)
おなじ蝶形の花でもニセアカシアを天ぷらにして食べると、ほのかな甘みがあっておいしいが、キングサリは有毒だ。
きれいな花には毒があるということか。
キングサリはもともとはヨーロッパ中南部が原産、日本には明治期に渡来した。
都心では北大構内にもあるが、園芸植物として一般民家の庭先の垣根からも時々観察される。

< ホオノキ >

資料館に近い知事公館に入いると、広い庭の入口に大きな白い花が迎えてくれる。
ホオノキの花である。
花の大きさは15cmほど、日本産の落葉樹の中ではもっとも大きな花といわれる。
ホオノキが大きいのは花だけでない。
葉も実も大きく、実に存在感のある花だ。(写真右)
冬芽もなぎなた風で面白い。

大きい葉で物を包めることから「包(ほお)の木」と言われた。
朴(ほおのき)さんという囲碁好きな方がいた。
ご先祖はホオノキと何らかの関わりがあったのだろうか。

ホオノキの花は良い香りがする。
また材質が良いので家具・彫刻のほか漆器にも使われる。
昔は嫁入り道具の裁断やまな板は、この木が最良とされたという。

ホオノキは、地球上に被子植物が誕生した初期の花と言われている。
植物が裸子植物から被子植物へと進化する際の過程に誕生した植物で、植物史には必ず登場する。
時代は1億年以上前の白亜紀というからその生命力に驚く。
地球をわがもの顔にしている人間様のちっぽけな歴史を改めて思い知る。
写真下左が果実(10月)、右が冬芽(2月)

      

ホオノキは全国的に分布し、北海道にも昔から生育している自生種だ。
庭園樹として都心で散発的に観察されるが、都心よりは森にあるほうが似合う樹である。
大きくてかたい果実は格好のリスのえさとなる。

札幌の都心ではサクラやライラック、そしてツツジなどがあちこちでまとまって咲いては市民の気持ちを和ませてくれている。
その一方で、キングサリやホオノキなどの花が単発で咲いていると、思わず足を止めて見入る。
わずか1本の木でも楽しいものだ。
観光客はこれらの花を見つけると、なんという花ですかとまず尋ねる。

まもなく大通公園にはソフトクリームのようなトチノキ(写真下左)、チューリップのようなユリノキ(写真下右)の花が咲き、ポプラの白い種がひらひらと舞う。
札幌の初夏は、花の土俵入りだ。
ただこれらの花はニセアカシアも含めて例年6月中旬には咲いているが、ことしは相当遅い。
もうすぐだろう。

札幌:望田武司

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