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【ハケンという蟻地獄】⑬「派遣」の正しい理解の仕方(下)
労働者の派遣が5業種(港湾、建設、医療、警備、製造)を除いて原則全面解禁になったのは1999年だ。派遣が可能だった業種は、それまでは26業種に限られていた。180度の転換である
派遣会社のトップは労働者から高額のマージンを取り自らはヒルズに住む(東京・六本木)
バブル崩壊後、リストラし過ぎた企業は人手が足りなくなった。さりとて社員を採用すると人件費がかさみ経営を圧迫する。人手が必要な時だけ雇い、必要がない時は抱え込みたくない。企業にとって派遣労働者ほど重宝なものはないのである。こうした企業事情にぴったりとマッチしたのが労働者供給事業である派遣だ。
規制緩和という美名のもと、経済界の要望で労働者派遣事業法は99年、改正(改悪)されたのだった。さらに2004年の法改正で製造業(メーカー)のラインにも労働者の派遣が可能になった。
派遣労働が苛酷となる大きな理由のひとつに、派遣会社がピンハネするマージンがある。法律によるマージン率の規制がないのだ。極端にいえば、80%をピンハネしても違法ではない。
一般的に派遣会社のマージン率は3~4割と言われる。もっと取っているという見方もある。筆者はこちらを支持する。日雇い派遣労働者の日収(1業務=1仕事の場合)が平均で約7,000円と低いのはこのためだ。
日収が低いのはもう一つ理由がある。始業1時間も前から集合がかかるが、時給には加算されない。にもかかわらず、遅れるとペナルティーが科せられ、給料から天引きされる。毎日仕事が入るわけではないから月収は10数万円だ。
寝る時間を惜しんで1日に2業務(=2仕事)こなせば、月収が30万円近くになることもある。ただし相当に体力があって、要領良く仕事を入れることができる派遣労働者は、100人に1人もいない。

派遣会社の意見広告。秋葉原の事件を受けて出した
ある30代の男性は今年1月、グッドウィルが業務停止になり直接雇用されるようになったため、月収が17万円も増えた。この男性は1日に2業務(=2仕事)をこなしていた。
派遣会社の高率なマージンがある限り、派遣労働者は余程の体力と要領の良さがなければ、ワーキングプアから脱出できないのである。
「マージン率に手をつけなければ、この問題(派遣問題)はどうにもならない」。労働問題を専門に手がける弁護士や労働法規に詳しい政治家は口を揃える。
言え方を変えれば、派遣会社は高率のマージンで巨額の収入を得ている。これほど濡れ手で粟の商売もない。
「規制緩和が我々の苦しみの根っこ」
冒頭に述べたように、企業は需要がある時だけ人手が欲しい。日毎の需要変動が激しい倉庫業や運送業にとって、1日で「使い捨て」にできる日雇い派遣労働者はノドから手が出るほど欲しい。グッドウィルの強みは、1日3万人を集め稼動させることにあった。 グッドウィルが暴利を貪り放題だったのは、業界の需要を満たしていたからであった。
「鵜匠(企業)は鵜(派遣会社)を使って鮎(派遣労働者)を獲らせて儲ける」。製造業で働く派遣労働者のユニオンである「ガテン系連帯」の小谷野毅事務局長が派遣を鵜飼いに喩えているが、見事である。
メーカーにとって花形商品である携帯電話、ビデオカメラなどはモデルチェンジが激しく、多品種少量生産となる。ラインの稼動、休止が頻繁に繰り返される。労働者は必要な時だけ欲しい。後は要らない。
経団連会長がトップを務める某カメラメーカーが、「偽装請負」という違法行為にまで手を染めても派遣を手放したくない理由がここにある。この会長は偽装請負の取り締まりに異論を唱えた人物でもある。
関東自動車は5月26日、派遣労働者150人のリストラを一斉に通告した。来月一杯で契約解除というのだ。150人のうちの1人に秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大容疑者はいた。車の生産では世界のトップメーカーと言われる親会社の生産調整だった。この自動車会社会長もまた経団連の前会長だった。
「経団連に怒りの矛先を向けるべきだ。規制緩和が我々の苦しみの根っこだ」。小谷野毅「ガテン系連帯」事務局長は声を絞り出すようにして話した。 《おわり》
東京:田中龍作
この記事の初出は日本インターネット新聞(JANJAN)です
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