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【ハケンという蟻地獄】⑩日雇い派遣が禁止されても・・・

派遣労働者から追及される厚労省の担当官(昨年6月、参院会館)
派遣労働について厚労省の対応は、これまで後手後手に回っていた。派遣労働者たちで作るユニオンは、グッドウィルによる「データー装備費」のピンハネや二重派遣などの違法行為を、法律に則ってきちんと指導するよう、繰り返し厚労省に求めてきた。
にもかかわらず厚労省はまともな対応を怠たり、違法行為を野放し状態にしてきた。このためデーター装備費は返還を求める訴訟となり、二重派遣は警視庁がグッドウィルの幹部3人を職業安定法違反幇助の疑いで今月3日、逮捕するに至った。厚労省が厳正に指導していれば、事態はここまで悪化しなかったはずだ。
労働者よりも企業を守るために存在するような厚労省だったが、舛添大臣が今回重い腰をあげたのは、秋葉原の無差別殺傷事件で逮捕された加藤智大容疑者(25)が派遣労働者だったからだ。
派遣労働はワーキングプアを生み出す社会問題だとして昨年あたりから世論の激しい批判を浴びていた。放置しのままだと、低支持率に喘ぐ福田内閣のマイナス材料がまたひとつ増える。
加藤容疑者は日雇いではなく、トヨタの下請けの自動車工場で働く「登録型派遣労働者」だった。メーカーは労働需要の季節変動が激しい。コスト維持のためには登録型派遣労働者は手放せない。
トヨタやパナソニック(松下電器)を敵に回す法改正は、至難の業だ。であれば、日本を代表する企業からの轟々たる反対に遭うことのない「日雇い」からまず手をつけよう――政府・与党や舛添大臣がこう考えたと見るのは、うがち過ぎだろうか。

違法ピンハネの返還を求めて提訴(昨年8月、東京地裁)
手元に月1~2万円の登録型派遣
派遣社員歴10年、自らも派遣会社と賃金未払い問題などで争っている40代男性のTさんは、舛添大臣が示した「日雇い派遣禁止」の方針に3つの疑念を呈する。
1、「日雇い派遣」を禁止することができるのか?
引っ越しを主力とする運送会社などにとって、日雇い派遣の禁止は死活問題となる。引っ越しは主に日曜・祭日に集中し、業務は苛酷だ。使い捨て可能な日雇い労働者の確保は欠かせない。運送会社の猛反対に遭って、骨抜きになりはしないだろうか?
2、法律で禁止しても派遣会社は「抜け穴」を作る。
「『日雇い』は禁止、『○カ月以上』であれば派遣は可能」と法律で謳っていても、派遣会社がペーパーカンパニーを作って、派遣労働者と契約させる。すでに大手派遣会社○○(実名)はペーパーカンパニーを作っている。厚労省はわからないだろうし、気づいても面倒くさいから指導しない。
3、「日雇い派遣」がなくなっても「登録型派遣」はなくならない。
「登録型派遣」として自動車工場の住み込みで働くと次のようになる―。
自動車会社から払われる給料から派遣会社のマージンを引かれ、部屋代、冷蔵庫代を引かれる。
そもそも工場の住み込みで働こうという派遣労働者は金に困っている若者が多い。派遣会社は生活費と称して幾ばくかの金を貸す。前借金となり、これも給料から引かれる。1ヶ月しゃにむに働いても手元には1~2万円しか残らない。
これでリストラされれば、住家さえ失う。秋葉原無差別殺傷事件の加藤容疑者を弁護するわけでは決してないが、自暴自棄になっても不思議はない。
「日雇い派遣禁止」について、労働問題を専門に手がけるある弁護士は「1日雇いは禁止して、日数を延ばせば済むという問題ではない。『登録型派遣』も禁止にしなければならない。常用雇用が原則だ」と語る。
たとえ「日雇い派遣」が法律で禁止されても『蟻地獄』はなかなか抜け出させてくれないようだ。
東京:田中龍作
この記事の初出は日本インターネット新聞(JANJAN)です
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