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北京あんな事やらこんなことやら(29)
~郷に入っては、郷に従いつつ②~
北京生活も今年2月で早くも3年目に突入。赤信号でも平気で横断歩道を渡るようになったり、ストレートに相手の給料を聞くようになったりするなど、「郷に入っては郷に従いつつある」ことが増えてきたなと感じる一方で、なかなか慣れないものも勿論ある。のんびりとした、計画性のない、詰めの甘い仕事ぶりもそのひとつだ。初めの頃は、それで大いにイライラし、衝突もした。
北京五輪メインスタジアム(2007年7月に撮影)
計画性のない仕事ぶりと言えば、北京五輪のメインスタジアムである通称「鳥の巣」の工事も、そのケースに入るだろう。もともとは去年の末までに完成する予定だったのが、まず今年の3月に延びた。しかしそれでも完成しそうにない。3月の初めになって北京市の副市長は、完成時期は4月になると表明。4月18日からはこの競技場を使った初めての陸上競技大会が予定されており、それには辛うじて間に合うらしいが、副市長は会見で「あくまでも予定通りの完成だ」と強弁した。
工事が遅れた原因のひとつとして、開幕式のイベントの内容が固まらないので、そのための関連設備の建設が遅くなったことを挙げているが、日本では考えられないことだ。しかもオリンピックのメイン会場という大切な施設の工事の遅れに対して、批判的な記事はほとんどお目に掛からない。そう言えば、マイホームブームで住宅価格の高騰が新聞紙上をにぎわしているが、住宅の引渡し時期が予定通り行かないケースも結構あるようだ。北京市郊外の団地の場合、2年間も完成が遅れたために買主が裁判を起こして違約金を要求したり、5度に渡って引渡しの時期を延期したりしたケースもある。
公園でのマージャン(2006年7月に撮影)
中国との貿易に携わったことがある日本人からは、「中国の企業が納期を守らないことは度々で、いつもイライラさせられる」という話を良く聞いたが、こちらでの生活が長くなると、次第にこうしたことに慣らされて、腹を立てることが少なくなってきた。そして逆にこうしたノンビリした仕事ぶりにもプラスの面があることに気付く。
それは、完成の時期、納期をそれほど厳格に守らなくても良いということは、仕事に携わる企業や個人にとっては、締め切りに追われるストレスがないことを意味しているからだ。翻って日本の事を考えると、余りにも全てのことに厳しい締め切りが設定されており、息を抜く暇がないような生活を送ってきたものだなと改めて思うようになってきた。
北京に語学留学に来ている日本人から、こんな話を聞いたことがある。同じクラスの中年の日本人男性は、日本での会社での忙しさや責任の重さから鬱病になってしまい、会社を辞めて中国に語学留学に来たが、こちらに来て急速に良くなったという。それは勿論、学生生活という気楽さにも因ると思うが、赤信号でも道路を渡ることが出来、時間時間と厳しく追われることのない中国での生活によって、心にゆとりが生まれたからではないだろうか。
勿論、いつも決めた目標を確実に達成したり、一生懸命に物事を探求したりする国民性があるからこそ、日本のモノづくりが世界のトップレベルにある事は、重々承知をしている。それはそれで今後も必要なのだが、常にストレスを抱えながら、時間に追われながらの仕事のあり方、生活のあり方を見直して、もう少しゆとりある仕事、ゆとりある生活を楽しむことは出来ないだろうかと思いつつある今日この頃である。
北京:中村 治
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